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▼はじめに
書評といえば、文芸批評。たしかに書籍の中心は文芸だったし、宣伝の意味をこめて新聞メディアに登場する書評も、決まって文芸書だったのはそれほど昔の話ではない。今では漫画や写真集もその題材に採り上げられていることも少なくないが、本という大きな括りで考えてみると、まだ物足りない部分が結構ある。その一つが展覧会カタログだろう。
展覧会カタログは文字通り「展覧会の作品目録」として、展覧会の付属物のように考えられてきた。だが60年代あたりからその性格は一変する。コンセプチュアル・アートの台頭によって、展覧会カタログそのものをひとつの作品と捉える作家が数多く登場してくるのである。以降カタログは書籍として、かつ作品としての比重を高めていく。現在ではカタログにISBN*がつけられることも多い。またインターネットの発達により、部数の少ない書籍でも手軽に購入することができるようになった。試しにアマゾン・ドットコムで知っているアーティストの名前を検索してみると、意外にもそのリストには展覧会カタログがいくつか含まれていることに気がつくのだ。このように、展覧会カタログは書籍の一分野として定着しつつある。
以上のような状況を考えてみると、書評は一歩出遅れている感がある。このReviewは、採り上げられにくい美術関係書籍を批評してみようという、そんな意図から始められた。幸いにも、今私は海外の展覧会カタログを手に入れやすい環境にいる。そのことがもとで、書評のお話を頂いた。私としてもこの環境をうまく活用して何かできないかと考えていただけに、願ってもない話だった。だが書評を始めるにあたって、いくつか問題もあるだろう。これまで採り上げられてこなかったことには、少なからず理由があるからだ。それは主に展覧会カタログを書評しようというときに発生する。展覧会カタログは展覧会と合わせて出版されるため、その評価点をどこに設定するべきか、ということが曖昧になるという危惧である。筆者は展覧会を批評するのか、それともカタログを批評するのか?だが考えてみて欲しい。今や展覧会カタログは一つの書籍として耐えうる域にまで達している。特に海外ではその傾向は顕著である。中には展覧会自体より充実した内容のものも少なくない。そこでこれを「もう一つの展覧会」として編集したと見れば、その書評もそれほど無謀なことではないはずだ。難しいとはいえ、やってみる価値はある。
もちろん美術書は展覧会カタログだけではない。論文を中心とした学術書もあれば、芸術家の評伝もある。写真集や批評家の評論集もあるだろう。それらは日々出版され、店頭に並び、やがては絶版になって人目から遠のいてゆく。いや、美術や写真に関する書籍は人目にさらされることすらあまりないかもしれない。そんな本たちをわずかなりとも紹介することができれば――今私はそんな風に考えている。
*ISBN…International Standard Book
Numberの略。国際標準図書番号。1970年にISO(国際標準化機構)により制定された。日本は1981年に加盟。
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