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第6回 photographers' gallery講座
「報道写真の逆説――木村伊兵衛の戦中のふるまい」
講師:楠本亜紀(写真論)

司会:斎数賢一郎

2006年12月10日(日) 18:00〜

講座概要



 写真集の出版や、展覧会の開催など、現在では木村伊兵衛が再ブームのような感もあります。とはいえ、再ブームなどなくとも、木村は日本写真界で最も影響力があるともいえる写真賞に名前が冠される存在で、その栄光に陰りはありませんし、『アサヒカメラ』では現在でも木村の写真が連載されています。
 そうした確たる評価のある一方で、私たちは木村の負の部分と目されることもある戦時中の活動について、あまり多くのことを知りません。木村が対外宣伝誌である『FRONT』の制作に関わっていたのは周知の事実ですが、そうした表立った事例ではなく、今ではあまり知られることのない雑誌や彼の写真集に焦点を当ててみたいと思います。戦争が激化していく当時、「報道写真」をめぐる議論の中で木村はいかに写真を撮り、雑誌に寄稿し、アマチュアに向けて言葉を発していたのでしょうか。

 今回の講座では、『photographers’ gallery press no.5』に発表された「「報道写真」をめぐる悪霊の起源」の著者をお招きして、木村の「もうひとつの顔」を検証していきます。

講座報告



 第二次大戦中、積極的な発言を行った名取洋之助や伊奈信男、土門拳に対し、実践面での指導が目立つ木村伊兵衛は徹底的な総括がなされないまま、戦後日本写真史に燦然と輝く写真家として扱われてきました。今回、楠本氏は戦中の史料を追いながら、技術指導に徹することによって批判を免れてきた木村に対し、その一点から彼の戦中活動を再検証する試みを行われました。写真報国という名のもとアマチュア写真家が総動員されるなかで、何を撮るかではなく、どう撮るかという技術指導に終始した木村の活動は、時勢に応じていかような写真も撮れるアマチュアの輩出に一役かっており、最も現実的で効率的な指導だったのではないか。また、従軍写真や銃後の生活を撮影した写真など、抵抗のありえた形を例示しながら、木村には戦前から戦後に至るまで一貫して写真への夢想的な態度が読み取れることを指摘されました。水面下での身体の規律化が進む昨今、戦中における木村の消極的な煽動は、現在の我々にとって重要な参照点として機能するのではないかと考えさせられる講座でした。

米田拓朗




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講師略歴



楠本亜紀 KUSUMOTO Aki

1972年生まれ。東京大学総合文化研究科博士課程中退。1999年、第6回重森弘淹写真評論賞受賞。2004年まで川崎市岡本太郎美術館学芸員。在職中の主な展覧会企画に「日本発見 岡本太郎と戦後写真」(2001年)、「肉体のシュルレアリスム 舞踏家 土方巽抄」(2003-04年)。著書に『逃げ去るイメージ アンリ・カルティエ=ブレッソン』(スカイドア、2000年)。
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