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第4回 photographers' gallery講座
「アルベール・ロンドの夕べ――時間のポリティクス」
講師:港千尋 (写真家)

司会:笹岡啓子

2006年11月11日(土) 18:00〜

講座概要



 2005年10月にphotographers' galleryで開催した港千尋展「Augustine Bataille Explosion #1:Entoptic and Ecstasy」では、19世紀末、サルペトリエール病院の患者のひとりであったオーギュスティーヌの観察・治験の記録写真を中心にご紹介しました。今回、再び港千尋氏を講師に迎え、サルペトリエール病院の写真部門において中心的な役割を担ったアルベール・ロンドの仕事を検証して、「写真」が可能にした観察と記録、そして記録によってもたらされた「時間」について考えます。 

[アルベール・ロンド Albert Londe(1858-1917)]


 4000人もの不治の女たちが監禁されていた19世紀末のパリ、サルペトリエール病院。医師シャルコーと写真家ポール・レニャ−ルによって、多くのヒステリー患者の臨床写真が撮影され、1876年、『サルペトリエ−ル写真図像集』として刊行される。1880年代、「クロノフォトグラフィ(動態写真)」で知られるエティエンヌ・ジュール・マレーのもとで助手としてさまざまな装置を考案していたアルベール・ロンドは、写真部門の部長としてサルペトリエールへ来る。1882年、9つのレンズにより患者の動作一連をとらえる複眼カメラを発明し、1891年には12個のレンズに改良され、12枚の運動写真の撮影に成功。前任者レニャールたちの役割を事実上、引き継ぎ、1888年に『新・サルペトリエ−ル写真図像集 I 』を発行する。


講座報告



 その芸術性の低さから、写真史では「19世紀写真」として一括されることの多い19世紀末の写真にあって、1880年代は「それ以前/以後の写真」との語りが可能なほどの、重要な断絶点たりうるのではないか。エティエンヌ・ジュール・マレー、ならびにアルベール・ロンドの写真と写真装置の紹介を交えながら、その検証が行われました。写真の科学的使用と、それを支えた乾板の発明による露出時間の短縮化は、瞬間を開示すると同時に、その瞬間に写しこまれている対象のもつ意味を不明瞭にしたのではないだろうか。こうした相反は、動きの分解と映画の発明の同時性や、時間による身体の分析・管理と同時代に多発したストライキの間にも存在している、と港氏は強調されました。現在もなお継続されているシャッタースピードの短縮化に顕現される「時間の政治性」を考え、それに抗うための手掛かりとして、ロンドが前景化された貴重な一夜となりました。

米田拓朗

 

 


講師略歴



港 千尋 MINATO Chihiro

1960年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。パリを拠点に写真家、批評家として活動。現在、多摩美術大学美術学部教授、オクスフォード大学およびパリ大学の客員研究員。1996年、『記憶―「創造」と「想起」の力』でサントリー学芸賞受賞。2007年に開催される第52回ヴェネチア.ビエンナーレ美術展のコミッショナーに就任。主な写真集に『波と耳飾り』、『瞬間の山』。主な著書に『群衆論』、『考える皮膚』、『注視者の日記』、『映像論』、『洞窟へ』ほか多数。
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